沸石類(方沸石analcime,ソーダ沸石natrolite,トムソン沸石thomsonite,束沸石stilbiteなど)
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沸石類は数10種あり,光学的性質で種類はわからないことが多い。形態・へき開・結晶の伸びに対する消光角や伸長の正負,アイソジャイアーなどである程度,種類が推定できるが,同定に至らない場合が多い(めのう(石英)や氷長石類などに似ることもある)。
※沸石類は細かいものが多く,また,結晶内で複雑な分域構造を示すものもあり,アイソジャイアーが観察できないことも多い。

原子番号が比較的小さな元素が主成分で,かつ水分を多く含むので,屈折率はおおむね1.47〜1.52程度で薄片の接着剤:n=1.54よりもやや低く,平行ニコルでは割れ目や輪郭がやや明瞭に見える。一方,クロスニコルではおおむね干渉色が低く(複屈折量は0.002〜0.12前後)で,1次の暗灰色(等方体に近い)〜淡黄色程度の場合が多い。
※沸石類の内で,方沸石は多角形の断面で等方体のことが多く(主に偏稜24面体),ワイラケ沸石はそれと同じ形態でクロスニコルで1次の灰色の干渉色で集片双晶が認められる。これらについては光学的に種類の同定は可能である。
※まれではあるが原子番号が大きいSr,Baを主成分とする沸石類(ブリューステライトハーモトームなど)もあり,これらは屈折率がやや高く1.51〜1.55程度である(薄片の接着剤:n=1.54とほぼ同じで,平行ニコルでは割れ目や輪郭がわからない)。
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※沸石類は薄片作成過程で加熱処理すると脱水して相変化する場合があるので,沸石類は加熱処理しない方法で薄片作成する必要がある。なお,もろいので薄片作成中に欠損することも多い。
※沸石類の同定はX線粉末回折が一般的で,CuKαで低角側(およそ2θ=5〜40°の間)の強いピークが同定に重要である。
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色・多色性:いずれも無色で多色性はない。

形態:多角形の単独結晶の場合もあるが,板状・針状の結晶が亜平行〜射出状〜放射状に集合したものが多い。

へき開:結晶の伸長方向に明瞭〜完全なへき開が見られるものが多い。ただし,方沸石やワイラケ沸石は劈開は認められない。

消光角:単斜晶系以下の対称度のものは結晶の伸びに対し種類によりさまざま。正方晶系・斜方晶系のものは直消光。

伸長:種類によって,正の場合や負の場合もある。なお,斜方晶系以下の対称度(2軸性)のものについては結晶の伸び方向が光学的弾性軸のY方向なら同じ種類でも正の場合も負の場合もある。

双晶:種類によっては双晶を示すこともあり,クロスニコルでの消光状態でわかる。

累帯構造:Na・K・Caなどの置換による組成変化による累帯構造のほか,ケイ酸基(テクトケイ酸塩のフレームワーク)の4配位サイトにおけるAlとSiの秩序度などによる複雑な分域構造が存在することが時々ある。これらの原因でクロスニコル下で単一結晶内で複雑な消光状態を示すことが少なくない。


産状

沸石類は低温の熱水から生成するものが多く,火山岩の気孔や割れ目の充填物のほか,熱水変質岩中に石基ガラスの変質物としてスメクタイトや緑泥石などと共に微粒子で見られる場合が多い。また,凝灰岩の続成作用の過程で火山灰の火山ガラスの分解による自生鉱物としてできていることも多い(ケイ長質の凝灰岩では細かいモルデン沸石・斜プチロル沸石などが多量に生じている場合があり,時に沸石資源となる)。これらの熱水変質岩中のものや凝灰岩中の自生鉱物のものは微粒のことも多く見落としやすい。



玄武岩の気孔を満たす沸石類と方解石 
Ze:沸石類,Cal:方解石,Pl:斜長石
海中の火山活動でできた多孔質組織の玄武岩の気孔を満たす沸石類と方解石。海水がマグマの熱で温められて熱水となり,それが玄武岩自身にしみ込んで,その中のカルシウム分などを溶かしだし,その気孔に沸石類・方解石が沈殿(充填)したもの。気孔の壁際に最初に沸石類が沈殿し,次いでその中心付近に方解石(平行ニコルでは顕著なへき開線,クロスニコルでは虹色の高い干渉色が認められる)が沈殿している。沸石類は屈折率が1.47〜1.52程度で薄片の接着剤(n=1.54)よりもやや低く,平行ニコルでは割れ目や輪郭がやや明瞭に見える。またクロスニコルではおおむね干渉色が低く(1次の暗灰〜白色程度)で,針状結晶集合体であることがわかる。
なお,めのう(石英)は屈折率が薄片の接着剤(n=1.54)とほぼ同じなので,平行ニコルでは割れ目や輪郭はあまり見えず,かつ,常に直消光する。
なお,この玄武岩の石基には細粗さまざまの斜長石が多く,黒色不透明の磁鉄鉱粒や黄色の干渉色の輝石類が散在している。

肉眼で見た多孔質組織の玄武岩の気孔を満たす白い沸石類と方解石の例。